コップの水はまだ半分?ーフレーミング効果ー12月2011年



 

物事の考え方(認知)や表現方法によって、私達の感じ方は大きく影響されます。例えば、コップに水が半分入っているのを見て、「ちぇっ!もう半分しか入ってない」と考えますか?それとも「ラッキー!まだ半分も入っている」と考えますか?全く同じものを表現しているのに、 心的構成(フレーミング )次第で、印象が変わります。前者は悲観的な感情(不満、焦り、悲しみ、怒り等)を引き起こし、後者は楽観的な感情(喜び、感謝、満足感等)を引き起こします。そしてその感情が、その後の判断や行動に大きく影響するのです。 商品の広告やマーケティング、ニュースの解説等はこういったフレーミング効果を利用して、私達の判断・行動を彼等が意図する方向に誘導しようとします。こうしたフレーミング効果や認知を、自分の意志でポジティブに活用する事もできます。認知療法はその最たる例で、ウツの治療や、前向きな人生を送る為に広く活用されています。(認知療法に興味のある方は、デビット・バーンズ著『いやな気分よ、さようなら』をご参照下さい。)

 

一度「悪い子/困った子」というフレームを作った子どもに対しては、中々良い面を見ることが難しくなります。何かあると「やっぱり!」とその子の悪い所ばかりが目についてしまいます。でも、「素直に言う事を聞かない子」は「ちゃんと自分の意志のある子」かもしれません。私が昔、スクールカウンセラーとして、小学校の先生や保護者と話す時に子どもの行動をポジティブにフレーミングし直すと、先生や保護者の方は、始めはキョトンとしましたが、新しい視点で子どものことを見るきっかけになり、彼等の対応が変化し始めました。全てのことをポジティブに変える必要はありませんが、その子の特徴を長所として認めると、本人の自信もつき問題行動が減少し、周りの人の対応も楽になっていきます。

 

自信のない人は、 無意識にネガティブなフレームを自分に当てはめ、出来ない事ばかりを探すことが多いようです。寝る前にベッドの中で大反省会をする代わりに、今日一日、自分が努力した事、完全ではなくても、できた事を3つ思い起こしてみて下さい。 「部屋を少し片付けた」「いつもより、子どもに優しく接した」等、 些細な事で構いません。そして「がんばった。えらいぞ。」と自分を褒めて、ポジティブなフレーミングに変えてみましょう。自分の気持ちに嘘をつく必要はありませんが、認知を少し修正する事で、気持ちは確実に楽になります。何かを改善した方が良い状況であれば、ポジティブなフレームに変える事で、実際の行動を起す後押しにもなるはずです。

 

自分のポジティブな面に気がつく訓練をしていると、周りの人のポジティブな行動にも気づきやすくなります。いつも文句ばかり言い、自分にも、他人にも厳しい人は孤独になりがちです。反対に、自分や周りのポジティブな面を認めて、小さな事にも喜びを見いだせる人の周りには、人が集まって来ます。なぜなら、心地よいからです。現実から目を背ける必要はありませんが、心地よく過ごす為に、少し考え方を調節してみませんか?