大人の思い込みとその影響 2011年2月




フロイトやユングと並ぶ、現代心理学の巨匠アドラー(Adler, Alfred. 1870~1937)の理論の中に、Birth Order Theory(出生順位論)という説があります。長男、長女、真ん中、末っ子、一人っ子等 、産まれた順番や、その位置自体で、特定の性格に育つという考え方です。 わかりやすいので、雑誌等でも見かけることがあります。私達の日常会話でも「一人っ子だから、わがままなのよ」とか、「長男なのに、しっかりしてない」等の言葉を発していませんか? それは良いことなのでしょうか?

 

結論から言えば、自分の産まれた立場に合わせて、自動的に「しっかりしたお姉さん」になる子どもはいません。周りの大人に「お姉さんなのだから、がまんしなさい!」と言われ、従うことで褒められて、少しずつ自分の弟妹に譲ることを、学んでゆくのです。ですから、本当は、周りの大人の思い込みと期待のほうが、子どもの人格形成に影響を与えているのです。(前出のアドラーの出生順理論は、後の研究によって、生まれた順位よりも、その周りの大人の接し方のほうが、遥かに子どもの人格形成に影響力があるということが立証されました。)全く出生順が関係してないとはいえませんが、それが全てではないのです。

 

「女の子はおしとやかにしなさい」とか「男だから泣くんじゃない」等も同じような影響力があり、素直にしたがう子もいれば、それに反発する子どももいます。あなたもつい、「こうするべき/こうあるべきだ」という思い込みや、期待を言っていませんか?

 

しかし、はっきり口で言われなくても、敏感な子どもは、周りの期待を察知して、自分の意思を押し殺して、その期待に添おうと努力します。そして、「良い子」になり、自分に与えられた役割を演じ続けるうちに、いつの間にか、自分が本当に何をしたいのか、わからなくなってしまいます。私のところにセラピーに来るクライアントにも、そういった「良い子」のまま30代、40代を迎え、自分がこの先、本当はどうしたいのかわからない、と悩むケースが良くあります。周りの期待を読み取れるのは、素晴らしいことです。でも、自分の気持ちがわからなくては、本当の自分の人生がわからなくなってしまいます。

 

私が尊敬している日本臨床心理学の草分け、河合隼雄さんのお母さんは「男の子だって、悲しいときは泣いても良いのよ」と言ってくれたそうです。あれをしちゃ駄目、これをしちゃ駄目、と規制してしまうよりも、あれをしてもいいよ、これもしてもいいよ、という風に、可能性を広げてあげる使い方もあります。あなたにはどんな価値観がありますか?あなたの子どもは、周りの人は、あなたからどの様なメッセージを受け取っているのでしょう?少し立ち止まって、考えてみましょう。