サイレント・トリートメントとタイムアウト   2011年5月



セラピストという立場上、 私は個人の生い立ちを細かく聞きます。国籍に関係なく、クライアントが親の躾に対して強い不満を持つものに、サイレント・トリートメント(無視)があります。これは、親が何かしらについて怒っている時に、ガミガミ文句を言うのではなく、子どもの存在・行動・言うことを無視する態度を指します。 これは、子どもだけではなく、やられる人にとっては、とても辛い仕打ちです。

 

やる側にとってみれば、怒りを見境なくぶつけるよりは、サイレント・トリートメントのほうが相手にもダメージが少ないだろう、と判断しているのかもしれません。たしかに、怒りに任せて怒鳴ったり、暴力を振るったりしてはいけません。でも、サイレント・トリートメントをされたほうは深く心を傷つけられるのです。どうやら相手は怒っているようだけれど、どうしてなのかわからない。話しかける隙もない。愛の反対は、無関心だと言う人もいるように、自分に反応・関心がないと感じると、子どもはとても傷つきます。相手の機嫌を直そうとして、おどけてみせたり、話しかけてみたり、自分を責めたりします。それでも相手が黙殺を続けると、どうして良いのかわからず、途方に暮れてしまいます。明らかに気分を害しているのに、何も話さないので、解決のしようもない。皆が不幸な気分になります。

 

怒りでコントロールを失うことを恐れているのなら、タイムアウトを取りましょう。 通常、何か悪いことをした子どもを躾ける為のタイムアウトは、その子どもの年齢+1分が理想的と言われます。そして、どうしてタイムアウトが必要なのか説明し、時間の経過がわかり易いように、時計/タイマーを目の前に置く。周りに何か気が紛れるものを置かないのが基本です。タイムアウトをとることで、子どもだけではなく、親も興奮した気持ちが落ち着き、冷静に物事が受け止められるようになります。ポイントは、ちゃんと説明をする、タイムアウトの時間を区切ることです。

 

子どもに対してだけではなく、 大人にもタイムアウトは有効です。何も言わずにその場を去ってしまってはタイムアウトにはなりません。必ず、「感情的になりすぎて、 今話し合っても後で後悔することを言ってしまいそう。30分タイムアウトが必要だから、散歩に行って来る。その後に話そう」と、どれくらいタイムアウトが必要なのか、いつだったら話し合えるのかを相手に伝えましょう。そして、その後ちゃんと話し合って下さい。

 

何も言わずに、相手に解ってもらおう、変ってもらおうと考えるのは、サイレント・トリートメントと同じことです。必要であればタイムアウトも取りながら、ちゃんと話し合えば、前に進んで行ける筈です。大切な人との繋がりをより良いものにしていきましょう。