私がトラウマ治療を学ぶ中でであった本の中に、WHEN BAD THINGS HAPPEN TO GOOD PEOPLE -善良な人に悪いことが起こるとき-By Harold S. Kushner(邦題:なぜ私だけが苦しむのか:現代のヨブ記)という本があります。NYタイムズのベストセラーに選ばれ、話題になりましたから、ご存知の方も多いでしょう。著者はユダヤ教のラビ(指導者)であり、その経験が多く紹介されていまし。しかしこの本は、宗教という枠を超え、障害をもって産まれた子どもを持ち、そして子を亡くした一人の親としての立場で書かれています。
この本には、「ああ、なるほどなあ」と、目から鱗が落ちる思いがすることが、解りやすい言葉で書かれてます。 生きていくうえで、 誰しもがぶつかる疑問に真っ向から取り組んでいるので、世界各国でベストセラーになっているのも肯けます。私が特に素晴らしい、と思ったのは、「どうしてこんなことが私におこったの?」という素朴な、でも答えるのが難しい疑問について書いてある点です。
私のクライアントの中にも、「どうして彼はこんな事をしたのか?」「どうしたら彼女は変ってくれるでしょうか?」という疑問を常に抱いている人達がいます。それは、クシュナーの本の中にある、「どうして神様は私をこんなひどい目にあわせるのでしょうか?」という問いに近いものです。私たちはある程度、推測することは出来ますが、本当のところは、相手に聞いてみないとよく解りません。時には、本人でさえ説明できないこともあるのです。全ての出来事に理由があるわけではなく、「神が支配していないことがらもあるのだと、見方を変えることができたとしたら、たくさんの素晴らしいことが可能になるのです(p.67)」 自分で制御できない、 果てしなく答えの出ないことを解き明かそうと思い悩むより、過去に起こったことを乗り越え、これから自分がどう生きていくかを考えることが、大きな鍵になるのです。口で言うのは簡単ですが、実際にそれをなすのは大変です。 不幸なことは、 残念ながら、時として神にも防ぐことは出来ないが、それをどうやって乗り越えていくかは、その人次第であり、それを見守り支えてくれるのが神だと著者は言うのです。
他にも、悲しんでいる人にどのように接すればよいか、言ってはいけない言葉など、私達が知りたい事が沢山載っている本です。皆さんも今年、いろいろな問題があったかもしれません。それを乗り越えて、新しい年をより良い年にできますように願っています。