前回、トラウマ、Disturbing Life Experiencesについてお話しましたが、今回は子供がトラウマを体験した後、保護者がどうやってこどもをサポートするのか、についてお話します。
不幸にも、子どもが巻き込まれる事件はおこりますが、その対応は様々です。最近のニュースで私が驚いたのは、事件直後に当事者の子どもをニュース番組に出したり、取材に応じたりした親がいたことでした。トラウマを体験した直後に被害者を大衆の面前に引き出せば、更にストレスを課すことになり、状況を悪化させることのほうが予想されます。状況が落ち着いた後、本人の意思で公表するのとはまた別のことです。興味本位でメディアが話をききたがることはあっても、保護者としては、子供を守る為に、外界のストレスからしばらくは距離をおいてほしいものです。
子供が怖がったり、泣いたりしても、保護者の方はなるべく落ち着いてください。どう接してよいかわからない大人は、自分が困りたくないので「泣くな」とか、「もうそのことを話すのをやめろ」と怒る人もいます。これは子供がせっかく自分を癒す為に話をしたいのに、それを塞き止めてしまい、よくありません。気の利いたことを言わなくても良いのです。ただ、子供の気が済むまで、何度でも話をじっくり聞いてあげてください。子どもがショックを受けたことを、安全な場所で、自分を守ってくれる大人と一緒に思い出すのは、今はもうその事件は過去のものであり、自分は今、安全なんだ、と再確認するための大切なステップです。
そして、「この世は安全なところで何も心配しなくてもよい」という、ウソをおしえないでください。こういった不幸は起こってしまうけれど、でも必ず、頻繁に起こることではないことも強調してあげてください。
子供によっては、赤ちゃん帰りをしたり、今までは平気だったのに、一緒に寝たがったりするかもしれません。もし可能であれば、子供が不安な間は一緒の部屋に寝るのはよいのですが、大人が子供のベッドで添い寝する、もしくは、子供が大人の部屋の床に寝袋で寝る等、この状態が一時的だということを印象付けなくてはいけません。でなければ、トラウマから癒された後にも、子供が一人で寝たがらなくなる可能性があるからです。
次回は、子どもだけではなく、大人でも考える、「どうしてこんなことが私におこったの?」という素朴な、でも答えるのが難しい疑問についてお話したいと思います。