
今回は私が参加したEMDR学会で体験したことを9、10月号で皆さんにもお知らせしたいと思います。ジョージア州、アトランタ市で開かれた、今年で20周年になるこの学会。日本はもとより、台湾、イギリス、ルワンダ、インド、フランス、ガテマラ等、世界中から参加者があり、とても充実したものでした。参加者は医師、看護婦、カウンセラーなど、トラウマ治療をする医療機関の人達です。
トラウマ(心理的外傷)って何?
最近では日本でもよく使われるようになったこのトラウマという言葉。割合に新しいコンセプトですが、「虐待」等と同じく、昔から人間だけではなく、動物も体験してきたことですが、それを表現する言葉が存在しなかったわけです。簡単にいえば、なにか、心に傷の残るような出来事がきっかけで、その事件に関係する危険なものはもとより、本当は危険でないけれども、その事件を思い出させる物、場所、時間、匂い等に過剰に反応するようになります。(時には逆に麻痺したり、感じなくなります。)
これは、ニュースで報道されるような大事件から、他の人にはどうということのない日常の一コマが原因かもしれません。でも、その人にとって多大な心理的影響を与えるという意味では、かわりません。あえて言えば、小さなトラウマのほうが見逃され、早く処置を受けられず症状を悪化する事もあります。特に、子どもには、大人のように理路整然と事態を理解する理論はありません。彼等なりに理解しようとし、時には大人には考えつかないような関係付けをすることもあり、誤解されたりもします。
トラウマが積み重なると、落ち込んだり、怒りやすくなったりします。大人でも自分からその変化に気がつき、助けを探すことが難しいのに、こどもならなおさらです。まわりの大人が、気がついて手を差し伸べてほしいのです。
子どもの症状としてよくあるのは、以前はなかったのにオネショ、お漏らしをするようになる。突然さめざめと泣き出して、聞いても怖がって理由を教えてくれない。今までは好きだったのに、遊ばなくなり、他の子どもを避けるようになる、あるいは喧嘩ばかりするようになる等があります。子どもの場合、トラウマによる影響がでている症状と、発達障害(ADHD,アスペルガー、自閉症など)を混同されることもよくあります。本当は必要では無い薬を飲んだり、「じぶんは変なんだ」と、自分を責め、自尊心を傷つけることにもなりかねません。
EMDRはごく簡単な刺激を、交互に与えることにより脳に働きかけ、トラウマの影響を軽減します。通常の会話による治療とはちがい、言葉にたよらないため、子どもにはうってつけです。(もちろん大人にもお勧めしますが)興味の有る方は、英語 http://www.emdria.org 日本語 http://www.emdr.jp の学会のウェブサイトもあります。
「うちのこって、どうしてこうなのかしら?」と一人で悩まないで、まずは相談してみて下さい