May 2009 Archives

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風薫る心地よい季節がやってきました。けれども気候の変化についてゆけなくて、体調を崩す人もいるでしょう。体調不良のときは、心も不調になることがありますね。そんなとき、様々な気晴らしの方法があると思います。好きな本を読んだり、テレビや映画をみたり、好物を思いっきり食べたり。また、人によっては 、友達と長電話をしたり、日記を書いたり、音楽や絵画に楽しみを見出す人もあるでしょう。ペットと過ごして、屈託を晴らす人もいることでしょう。ペットとの強いつながりは、体験のない人には、想像が難しいかもしれません。なぜ、口もきけない動物と、そのような深い関係を築けるのか。私は、彼等が話さないからこそ、会話を超えた心の交流や支えが可能になると考えます。

「聴くこと」の難しさ
数年前に亡くなった、日本の心理療法士の草分け、河合隼雄氏の著書の中に、カウンセラーの基本であり、最も大切な技術は「聴くこと」と書いてあるのを、ご存知の方も多いと思います。
これは簡単なようで、とてもむずかしいことです。人は、何かを相談されたり、悲しんでいる人が目の前にいると、アドバイスや、励ましの言葉をかけがちです。それは相手を思いやる気持ちと同時に、自分の居心地が悪いからかもしれません。これは自然な反応で、ただ相手が言いたいことを、ジャッジせず、アドバイスすることなく「聴く」ことは、トレーニングをつんだカウンセラーにとっても簡単なことではありません。
ただ黙って何も言わないだけでは「聴く」ことにはなりません。相手の言うことを、理解しようと心を開き、その空間に相手を非難することなく一緒にいてあげることは、とても難しいけれど、素晴らしい効果があるのです。ペットの多くは、それを自然にやってくれるのです。

猫たちは、こちらが悲しんでいる時、どこからかやってきて、寄り添ってくれます。犬達も、飼い主が病気の時には、心配そうに目の届く所に寝そべっていたりするでしょう。彼等は励ましを言うわけでもなく、アドバイスをするわけでもありません。ただ、近くにいて、相手を思いやっていることを伝えるだけです。人間の場合、相談されて、長々と話をきいても、知恵を絞ってアドバイスしても、「わかった。有り難う」と言いながら、また同じようなことを繰り返す人を誰もが知っているでしょう。状況にもよりますが、多くの場合は、その人達はアドバイスを求めているのではなく、ただ「聴いて」もらい、気持ちを受け止めてもらいたい場合が多いのです。その欲求が満たされれば、自分で答えを見つけ、気が納まって、元気に日常にもどっていくでしょう。
 子どもが寝る前に絵本を読んでもらいたがるのも、自分を守っているくれる人がそこにいる、という安心感を求めているのです。 子どもやペットは、それを自然に、上手にやってのけるのです。だから彼等といると心が癒されることが多いのでしょう。私達おとなも、心の余裕のある時は、家族や友達の為に、「聴く」心を開いて、一緒にそこにいることを心がけたいものですね。次回は、そのOpen Heartについて、少しお話したいと思います。